「番組の作りが実に原始的なのが素晴らしいです。毎回何かのテーマに沿って、アメリカのあらゆるルーツ・ミュージックを中心に選曲し、ディランがあのだみ声でユーモラスに語るのです。各曲に関する歴史的なバックグラウンドの話もあれば、時々ボブ自身の経験談もありますが、話はさほど長くもなく、全体のテンポが聴きやすいです。音源は全てボブ自身のコレクションから、ということになっていますが、これはちょっとまゆつば....もしそうだとすれば本当に驚愕しますが、スタッフがかき集めているにしても選曲するディランの音楽の知識に脱帽します。 これだけ充実したラジオ番組は現在他にはなかなかありません。その制作にかなりのエネルギーを注ぎ続けるボブ・ディランも音楽文化の継承への貢献は大きく、アメリカのルーツ・ミュージックへの愛情はリアルに伝わってきます。 Theme Time Radio Hourで紹介される音源にはヒット曲もありますが、相当マニアックなレアものも多く、今回のコンピレーションにはぼくも聞いたことがなかった曲がかなりあります。2枚組にわたる50曲の選曲は番組のプロデューサーでもあるエディ・ゴロデツキとエイスのロジャー・アームストロングの共同作業によるもので、詳細な曲目解説は様々な専門家たちが寄せているので、本当に申し分ない作品です。Theme Time Radio Hourが末長く続き、このコンピレーションもシリーズ化することを祈ります。」――― ピーター・バラカン